巡りあるき

うたひながら夜道を帰るからつぽのひだりの胸に風がはいつた

そして歩き始めた

術後7年目に入ったその年、6:4で迎えられるかどうか未定だった還暦を迎えることができました。林住期と言うそうで、パソコンには何度打っても臨終期と出る。(笑)

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5年生存率という言葉があるが、私の場合60%の確立だった。この言葉はあまり好きじゃない。よくよく考えてみれば、人間だれしも5年後確実に100%生きているという保証はない。おかしな話だが、生存率60%ということが実感として呑み込めず、存在が60%薄くなってしまうのかなあ…、ひょっとしてあの映画「バック・トゥザフューチャー」で、主人公の体が、足元から消えてゆくように、少しずつ消えてゆくのかも知れない…と思ったりした。

つい昨日まで、やるべき事、やらねばならぬ事を追い掛け回し、朝から次の朝まで喜々として(?)仕事をしていたから、いきなりそれら全てを「やらなくて良い・やってはいけない」と言われて、何だか宙ぶらりん…、まさしく地につく足が消えて体が宙に浮き、自分の居場所が消えてしまったような感じがした。

なので歩いた。毎日近くの丘陵の林の中をひたすら歩いた。

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初めは外に出るのも怖かった。が、思い切って出てみれば、やはり外は良かった、畑の麦の緑が鮮やかだった。それから少しずつ行先を伸ばし、おにぎり持参で一日中林に遊ぶことも多くなって行った。それと並行するように、気持ちも安定し、体力も徐々に回復して、癌が見つかる前より、体調は良くなったような感じさえした。

 ひと永く住むらし道のゆるやかにやさしく曲がりのぼりおりして