巡りあるき

うたひながら夜道を帰るからつぽのひだりの胸に風がはいつた

尾鷲 -熊野―⑶

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尾鷲は、夫が小学生時代を過ごしたところ、当時はなかったという火力発電所の塔がそびえています。尾鷲神社にお参りしてから、岩屋堂(尾鷲神社の奥の院?)を訪ね、天狗倉山に登りました。

尾鷲神社

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   尾鷲神社にもすごい楠

尾鷲神社を後にして、天狗倉山へ。ところが、岩屋堂への入り口見つかりません。地元の人に聞いてみても、首をかしげています、何を聞いているのか、分からなかったのかな…。

二度目に聞いた人に、ようやく入り口を教えて頂きました。地元では、天狗倉山をテンラさんと呼ぶそうです。習って“テンラさん”と言ってみると、なんだか一気にお山が身近になったような感じ(^^

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  岩屋堂への道          猪のヌタ場?

  

  この夏の一番暑い日磐座を尋ねて尾鷲天狗倉山に入る

  植林の杉の真中にいきなりのごろり磐座照樹かむりて

  磐座の力に引き寄せらるるまま羊歯かきわけて道なきを行く

 

「神々の眠る熊野を歩く」(植島啓司鈴木理策)によれば、岩屋堂までそれほど時間はかからない様子なので、軽い気持ちでテングラ山に入った。日本有数の雨の多い尾鷲、杉林の下は腰の高さぐらいの羊歯が鬱蒼としています。しばらく登ってふと下の方を見ると、ぬかるみをぐちゃぐちゃ掻き回したような所が見える。猪のヌタ場!に違いない。まさか?でも、子供が遊んだ跡にも見えないし…。

木立の上の空が少し明るくなり、かなり登って来たのに磐座はなかなか現れません、まだかなあ…と思いながら登ってゆくと、よく手入れされた杉林の中にあり得ない姿で、丸みを帯びた大きな岩が座り込んでいる。いや、植林の杉に閉じ込められていると言った方がいいかもしれない。まっすぐ伸びたお行儀のよい杉の木が、びっしり取り囲んで鬱陶しそう…。

最初の磐座が見つかると、次の磐座はもうすぐそこに控えている。庇のように大きく迫り出した磐座がスケッチしてみたくなり、リュックを下した。さて、色を塗ろうとコンテを取り出した時、そばの杉の木を見ると下の方の皮が捲りあがっている。ふ~ん猪もここに立って牙を研いだのかな~、ここはちょっと平らで、立ちやすいものなあ…。

 

次々に現れる磐座を夢中になって辿るうち、いっとき、居場所が分からなくなってしまいました。あれ!?ここはどこなんだろう!!…さっきの磐座は…???とんでもない世界に入り込んでしまったかもしれない!!!!軽い気持ちでお山に這入ったことを反省…。

出会う磐座の一つ一つが強力で、その都度リセットされてしまう!!

こんな時、昔の人は「狐に化かされた」って言うのかな~^^;

 

小さな沢を見つけたので、辿って少し下り、石畳の道にもどることができました。

ヤレヤレ

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   岩屋堂脇の湧水と         祀られている蔵王権現

 

 

  覚えなき森の真中を往き惑いひとまず(かい)の岩清水のむ

  磐座の胎内三十三観音かげろふひかりにふはりと浮かぶ

  おほきモノの掌の中さまよひあくがれて辿りつきたりばうとして座

 

車に戻って、写真を確認してみると、最後に辿りついた一番大きな岩屋堂の写真が一枚もない。あの、畏かった岩盤が乗っている磐座は仕方ないにしても、岩屋堂ではゆっくり休んで、水場の写真も撮ったのに…、残念。岩屋堂には三十三観音が祀ってあり、巨大な庇のような岩の下に木のお堂が作られていました。お堂からは尾鷲の海と街がよく見えました。→次ページに夫に借りた岩屋堂内部の写真をアップしました

それにしても尾鷲の町から歩いて30分くらいの所にこんな世界があるなんて…

やはり、熊野は熊野だな~

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姫田さんはこの磐座のスケッチを見て、「磐庇というのは非常に重要です。自分で“その場で描く”という事も…。」 と仰っていました。「太古の人はどんなところで風雨をしのいだでしょう、洞窟なんかでは暮らせるもんじゃない。岩庇が最もしのぎやすい処だったのではないでしょうか。」と…。確かに、火を使うとすれば、洞窟よりも岩庇の方が暮らしやすいだろうな…。

 

もどって、岩屋堂入り口脇のホースからほとばしる湧き水をごくごく飲んで、出発です。