巡りあるき

うたひながら夜道を帰るからつぽのひだりの胸に風がはいつた

山茶花

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人の耳には ただ

「かさっ…」としかひびきませんが

その一言を 忘れる落葉はありません

きん色の秋の空から おりてきて

いま 地面にとどいた

という その一しゅんに

 

「ただいま…」

なのでしょうね それは

長い長い旅のバトンタッチを終えて

ようやっと ふるさとの

わが家の門に たどりつき

ようやっと それだけ言えた

 

・・・・・・

 

人の耳には ただ

「かさっ…」としかひびきませんが      

                        まど・みちお「いのちのうた」より